日向内記 白虎隊士達と別行動を取った士中二番隊隊長を再評価する書籍が福島民報出版文化賞正賞を受賞

慶応4年8月23日(1868.10.8)会津戦争における戸ノ口原の戦いに焦点を当て、その前夜白虎士中二番隊からひとり離れた隊長日向内記を再評価する冨田国衛氏の書「会津戊辰戦争 戸ノ口原の戦い 日向内記と白虎隊の真相」が第32回福島民報出版文化賞正賞に輝いた。(2009.7.5福島民報)

通説となっている日向内記が22日夜に「食料調達のため、隊を離れそのまま戻らなかった」は、飯盛山で自害した後に蘇生した飯沼貞吉の証言を唯一の拠り所としている。一方で平成5年に発見された白虎士中二番隊もう一人の生存者酒井峰治が書き残していた「戊辰戦争実歴談」によると、内記が22日夜はおろか食料調達のために隊を離れたとする記述は見当たらない。

私はこの冨田氏の書を未読なので事実の検証は省きますが、解説を読むと酒井峰治の「戊辰戦争実歴談」にウェイトを置いているのが判ります。今日、食料調達離脱説を取っているのはTVのドラマなどが中心というのが実情です。内記は22日夜に隊士達に野営を命じ、自身は近くの強清水村の陣の軍議に出席し、戸ノ口原に戻る途中敵に遭遇し道に迷い、結局若松城に入城したというところに落ち着いている。確かに現時点で声高に自害の責任は全て内記にあるとする人はほとんどいないかもしれません。それでも、その行動の結果が少なからず飯盛山の悲劇の一因であったとしている歴史家も少なくないのが現状のようです。

 では、飯沼貞吉の証言は真実ではないのでしょうか?もう一つの悲劇の一因として常に云われているのが、士中二番隊が滝沢本陣から戸ノ口原に出陣する際に、戦の基本である糧食の携行をしなかった事が挙げられます。あくまで想像ではありますが、空腹を忍しずぶ濡れでの戦闘と行軍だっただけに内記が隊を離れた件を貞吉が他の隊士から又聞きしたと仮定すれば、そこには隊長が食料を調達してきてくれるはずだという希望的な要因が入り込んでもおかしくはなかったかもしれません。

 実際、その後若松城篭城戦を戦い抜いた日向内記が士中二番隊を見捨てたということはあり得ないわけです。戦時下であったとしても、部下の行方を気にしていたと思われます。戦後、飯盛山での悲劇を知り若者達を無用に死なせてしまったことに対して大いに責任を感じていたことでしょう。亡くなるまで会津から離れた喜多方で生活していたことも、その現われの一つです。それは蘇生した飯沼貞吉が同じく会津には戻らず、名前まで変えて生き続けたこともしかり、「戊辰戦争実歴談」が発見されるまで白虎隊士であったことさえ家族にも話してなかった酒井峰治もしかりなのです。生き残った人達が死んでいった人達の分も背負って生きていくことは、本人にしか判らない大変辛いことであったと思われます。

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コメント

  1. U3 より:

    わたしは会津に行くと必ず飯森山に行きます。

  2. Yubarimelon より:

    shinさん、c_yuhkiさん、takemoviesさん、xml_xslさん、nice!ありがとうございます。

  3. Yubarimelon より:

    U3さん、nice!コメントありがとうございます。
    会津には見所が他にもたくさんありますけど、必ず飯盛山を訪問しているとうのはすごいですね。

  4. 月城 より:

    冨田さんの御本の記事が出ていたので、嬉しくて寄らせていただきました。
    この本は確かに酒井氏の『戊辰戦争実歴談』も資料としておりますが、それだけではなく『戊辰役戦史』『会津戊辰戦史』『若松記』『慶応戊辰見聞録』『会津白虎十九士傳』『白虎隊事蹟』『河北新報』などその他多くの関連資料や、会津藩士の談話や記録、資料を論拠としております。
    それらを時系列にして突き合わせ、戸ノ口原一帯での戦いや、彼ら白虎隊の足跡が事細かに書かれています。
    また「食料調達」の談話を残したと言われる飯沼貞吉の証言についても、丹念に資料をたどり、その矛盾を書かれています。
    飯沼貞吉が語った証言に「食料調達を理由に逃げた」という話はなかったという事実です。
    実際、白虎士中二番隊十九士の自刃に関しても、19人が同じ場所で自刃したことになっていたり、戦死者も自刃者になっていたり、刺し違えて・・・という話になっていたりと、後年の創作色の強さは驚くことが多いのですが、それらが史実として語られるのを見るにつけ、日向氏の敵前逃亡説についても再考される時期に来ているのではないかと思います。
    少しでも興味をお持ちいただけましたら御一読いただけると、歴史が「作られて」行くものだと改めて感じられ、読み物としても面白いかと思います。
    過去記事であるのに、長々と勝手なことを書きました。
    御不快に思われましたら、どうぞお許しください。

  5. Yubarimelon より:

    月城さん、コメントありがとうございます。
    記事に書きながら、本書をいまだ未読なことを恥じております。最近、飯沼貞吉の新しいニュースもありましたから、これを機会にぜひ読んでみようと思います。
    私の書いた記事は、新しいものより過去の方が訪問される方が多いのが特徴のようなので、また何か気づいたことがありましたら、コメントをお願いします。

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