桜田門外の変 井伊大老を襲撃した浪士が所持していた拳銃を古武器研究家が公開

古武器研究家・澤田平氏(大阪市)が15日、茨城県県庁で記者会見し、幕末に製造された日本製拳銃を公開した。銃を納めた箱のふた裏に「森五六郎義士 直弼公天誅の短筒」と書かれた紙が張られているほか、銃の特徴や製造時期などから「90%の確率で桜田門外の変で使われた銃」と澤田氏は鑑定している。(2010.1.16茨城新聞ニュース)

桜田門外の変は安政7年3月3日(1860.3.24)早朝、17人の水戸藩浪士と薩摩藩浪士1人の18人が登城中の幕府大老井伊直弼を襲撃、暗殺した事件である。当時井伊大老は朝廷の勅許を得ずに諸外国との通商条約を結び、将軍継嗣問題では水戸・薩摩の推薦する一橋慶喜を退け、自らが推す徳川家茂をその座につけた。そして、これらの問題への反対勢力に対しては容赦のない大弾圧を与えた。いわゆる安政の大獄である。

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『井伊大老暗殺に使用されたとされる拳銃と澤田氏 下は銃身に入れられている中澤晃敬の銘』

澤田氏は火縄銃の鑑定や旧式時計のコレクターとしてテレビや著作でご存知の方も多いと思います。その氏が満を持して公表したというのですから、信憑性は高いのではないでしょうか。なるほど、90%本物というのも頷いてしまいます。

しかし、記事だけ読んだ後で私は何故という疑問が沸いてきてしまいました。それは森五六郎義士とある箱の裏書です。事件当日、森五六朗は駕籠訴状を装い前方から近づき、取り押さえに来た彦根藩の供頭に斬りかかっています。これは駕籠周りの護衛達の注意を前方にそらすための陽動で、次ぎの瞬間に黒澤忠三郎が駕籠に向けて拳銃を発砲、この発砲音が襲撃開始の合図になったということです。

普通に考えると襲撃に使用された拳銃は黒澤忠三郎が所持していたわけです。黒澤は事件当日重傷を負いながらも自訴し、後に病死しています。一方、森も自首した後の数年後に伝馬町獄舎で斬首されています。二人はそれぞれ自訴した場所は異なったものの、事件同日中に細川熊本藩藩邸に移送され幕府の取調べを受けています。この時に重傷を負っていた黒澤がこの拳銃を森に託したものなのかと私は勝手に想像したわけです。

ですが、事実はそうではありませんでした。調べてみると襲撃を実行した浪士18人の他に暗殺を計画した首謀者達がいました。その中に元水戸藩吟味役の木村権之衛門という人物がいることが判りました。この人がその前夜に襲撃メンバーの関鉄之介、稲田重蔵、斎藤監物、黒澤忠三郎、そして森五六郎の5人に一挺づつ拳銃を渡していたということです。つまり、公開された拳銃は襲撃の際には使用されなかったものの、それを所持していた森の遺族に伝えられていたものと考えて間違いないでしょう。

また、これまで黒船が来航した際にペリー提督が幕府へ献上した拳銃は米国コルト社製のM1848リボルバー(コルト・ドラグーン)と考えられてきましたが、この水戸藩製の模倣拳銃が実物であるとされればM1851(コルト・ネイビー)であったということが確実になりそうです。さらに徳川斉昭公が藩内で製造させた拳銃は技術が未熟で銃身内に旋条が刻まれてないものだと思われてましたが、公開された銃の銃身内には高度な旋条線があったということです。

コメント

  1. fuzzy より:

    桜田門外の変で使用された銃の記事興味深く読みました、この銃は桜田門外の変で井伊大老を撃った銃ではないのですか、それにしても歴史的に非常に貴重な銃ですね。澤田氏は鑑定団の一員ですね、好きな番組です。

  2. Yubarimelon より:

    fuzzyさん、コメントありがとうございます。
    現段階では大老を狙撃した銃であるかどうかはまだ確定してないようです。blogはあくまで私の推測です。ですが、史実として大老に向けて銃を発砲したのは黒澤忠三郎だけだとされてるので、今後の調査と発表を待ちたいと思います。

  3. ノリパ より:

    ずっと、大老の大名行列に切り込んで行って、果たして暗殺できたのか、
    と思ってました。どんな小説も、ふがいない供のものたちでしたから。
    そんなものかな、と思ってました。
    でも、銃を使った、というのは初めて知りました。。。、どんな形にしろ、
    銃を使った可能性は確かにありますね。まったく考えてなかったです。
    ほんとかどうかは別として、新たな視点を教えていただきました。
    といっても、知らなかっただけですが。。。

  4. Yubarimelon より:

    ノリパさん、コメントありがとうございます。
    史実では彦根藩の供侍の中にも奮戦した人がいたということです。特に二刀流の使い手である河西忠左衛門は最後まで駕籠から離れず稲田重蔵を切伏せています。

  5. Yubarimelon より:

    niceを入れていただいた皆さん、ありがとうございます。

  6. 通りすがり より:

     鉄砲類は門外漢ですが、興味深く拝見しました。澤田氏の話は、目の付け処は良いのですが、検討が甘く思い込みの域を出ないのが残念です。
     数寄者が飛び付きそうな内容の、誰が何時かいたかも分からない箱書を鵜呑みにするのはまずいでしょう。話を大きくするため敢えて暈しているならいざ知らず、もっと客観的な検討が必要でしょう。ましてや県も巻き込んで公表するのであれば、尚更だと思います。
     色々な問題があるでしょうが、知られていない歴史に光を当てる行為は称賛に値すると思います。

  7. Yubarimelon より:

    通りすがりさん、コメントありがとうございます。
    映画「桜田門外ノ変」の公開に合わせて発表されたようでしたから、PRという面では注目されたニュースだったと記憶しています。
    そういえば、今夜の「なんでも鑑定団」に澤田氏が火縄銃関連で出演するそうなので、ぜひ見たいと思っています。

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