ミック・ジャガーは現代の西郷隆盛?

 サンディエゴ(CNN) 英ロックバンド、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーさん(69)が、子どもたちに家を買ってやるようにという元妻からの要求を退けた。英大衆紙のデーリーメールが伝えた。(2013.3.25 CNN)

或る時「幾歴辛酸志始堅 丈夫玉砕愧甎全 一家遺事人知否 不為児孫買美田」との七絶を示されて、若し此の言に違ひなば、西郷は言行反したりとて見限られよと申されける。 『南洲翁遺訓』

明治ニ十二年に大日本帝国憲法が公布された際、西南戦争で賊となった西郷隆盛の名誉が回復された。旧庄内藩士菅実秀は生前の南州翁から聞いた話や言葉を一冊の書にまとめ、翌年これを『南洲翁遺訓』として発行した。

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『児孫のために美田は買わず』

結論から言うと、西郷隆盛とミック・ジャガーの「児孫のために美田は買わず」は似て非なるものである。記事からミックが子供に家を買わないというのは、子供の教育上あるいは自立するための障害になるからだと記者は書いている。すなわち、それはあくまで彼の子供のためというのが本意なわけだ。

一方、南州翁の漢詩を現代語訳すると、「何度も辛い目や苦しい経験をした後にこそ、その人の志ははじめて何にも負けない堅固なものになる。そうした志を身につけた本物の男子とはたとえその身が散ろうとも、志を捨ててまで簡単に砕けてしまう瓦のように長生きすることを恥とするものである。私には自分の家に遺しておくべき教えがあることを人は知っているだろうか。それは子孫には将来のための財産を残さないということだ」となる。

この詩が作られた背景から、西郷が維新の後に中央を嫌い、自らを政から遠ざけようとしていた理由の一端を垣間見ることが出来る。結局、周囲は翁が鹿児島に引篭もっていることを許さなかったわけで、漢詩の後半部は政治家としてのあるべき姿勢を、自らに課した決意と解することが出来るのです。(1)

幕末、血煙弾雨の中からようやく新しい日本に作りかえることが出来た途端、新政府の高官に就いた維新功労者たちは私利を貪り、贅沢な暮らしに身を堕とした。そんな彼らの自堕落ぶりを端で見ていた翁は、自分はこんな国を作るために無私の若者らを死地に送り込んでしまったのかと、深く嘆いたのであろう。

理由は違えど、美田を子供たちに買い与えない二人でした。もっとも、考えるまでもなくミック・ジャガーに西郷隆盛であってほしいなどと望む人はいないでしょう。各言う私自身も。私がミックに望むことといえば一つだけ。それはもう一度ストーンズの日本公演を行ってほしい、といったところでしょうか。

(1)遺訓は、明治以降の翁の思想、心境である。実は若き日の西郷さんも、遠島の刑を受けた大島での島妻愛加奈と子供たちの生活が困らないよう田畑を買い与えているのです。

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